え》して居てくれゝば己も安心して家をお前に預けて明《あけ》るが、何も盗まれる物はねえが、一軒の主《あるじ》だから、おいお前此処でそうして留守居をしてくれゝば、己が帰《けえ》って来ても火は有るし、茶は沸いて居るし、帰って来ても心持がいゝ、己ア土手の甚藏と云う者だが、村の者に憎まれて居るのよ、それがノ口をきくのが江戸子同士でなけりゃア何《ど》うしても話が合わねえ、己は兄弟も身寄もねえし、江戸を喰詰めて帰れる訳でもねえから、己と兄弟分になってくんねえ」
 新「有難う存じますな、私《わたくし》も身寄兄弟も無い者で、少し訳があって参りました者でございますが、少し頼る処が有って参りました者で、此方《こちら》へ参ってから、だしぬけに亡《なく》なりましたので」
 甚「死んだのかえ」
 新「ヘエ其処《そこ》が、ヘエ何《なん》で、変になりましたので、ヘエ、何処《どこ》へも参る処は無いのでございますから、お宅を貸して下すって商いでもさして下されば有難い事で、私《わたくし》は新吉と申す者で、何分《なにぶん》親分|御贔屓《ごひいき》にお引立を願います」
 甚「話は早いがいゝが、其処《そこ》は江戸子《えどこ》だか
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