鮮血《のり》に染《そ》みて居るので、ハッとお驚きになると酔《えい》が少し醒《さ》めまして、
 新「奥方心配せんでも宜《よろ》しい、何も驚く事はありません、宗悦《これ》が無礼を云い悪口たら/\申して捨置き難《がた》いから、一打《ひとうち》に致したのであるから、其の趣を一寸|頭《かしら》へ届ければ宜しい」
 ナニ人を殺してよい事があるものか、とは云うものゝ、此の事が表向になれば家にも障ると思いますから、自身に宗悦の死骸を油紙《あぶらかみ》に包んで、すっぽり封印を附けて居りますると、何《なん》にも知りませんから田舎者の下男が、
 男「ヘエ葛籠《つゞら》を買って参りました」
 新「何《なん》だ」
 男「ヘエ只今帰りました」
 新「ウム三右衞門《さんえもん》か、さア此処《こゝ》へ這入れ」
 三「ヘエ、お申付の葛籠を買《と》って参りましたが何方《どちら》へ持って参ります」
 新「あゝこれ三右衞門、幸い貴様に頼むがな実は貴様も存じて居る通り、宗悦から少しばかり借りて居《お》る、所が其の金の催促に来て、今日は出来ぬと云ったら不埓な悪口を云うから、捨置き難いによって一刀両断に斬ったのだ」
 三「ヘエ、そ
前へ 次へ
全520ページ中14ページ目


小説の先頭へ
文字数選び直し
三遊亭 円朝 の一覧に戻る
作家の選択に戻る
◆作家・作品検索◆
トップページ 登録 ご利用方法 ログイン
携帯用掲示板レンタル
携帯キャッシング