を」
と立上ろうとして、よろける途端に刀掛《かたなかけ》の刀に手がかゝると、切る気ではありませんが、無我夢中でスラリと引抜き、
新「この糞たわけめが」
と浴せかけましたから、肩先深く切込みました。
三
新左衞門は少しもそれが目に入らぬと見えて、
新「何《なん》だこのたわけめ、これ此処《こゝ》を何処《どこ》と心得て居《お》る、天下の直参の宅へ参って何だ此の馬鹿者め、奥方、宗悦が飲《たべ》酔って参って兎《と》や角《こ》う申して困るから帰して下さい、よう奥方」
と云われて奥方は少しも御存じございませんから手燭《てしょく》を点《つ》けて殿様の処へ行って見ると、腕は冴《さ》え刃物は利《よ》し、サッという機《はずみ》に肩から乳の辺《あたり》まで斬込まれて居《い》る死骸を見て、奥方は只べた/″\/″\と畳の上にすわって、
奥「殿様、貴方何を遊ばしたのでございます、仮令《たとえ》宗悦が何《ど》の様な悪い事がありましても別懇な間でございますのに、何《なん》でお手打に遊ばした、えゝ殿様」
新「ナニたゞ背打《むねうち》に」
と云って、見ると、持って居《い》る一刀が真赤に
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