ッ放《ぱな》しの家《うち》だアから、是は何処《どこ》の者だ、何《なん》だいお前《めえ》は」
 清「此家《ここ》な主人《あるじ》で、挨拶さっせえ、是は江戸の者だが雨が降って雷鳴《かみなり》に驚き泊めてくれと云うが、己《おれ》が家《うち》でねえからと話して居る処だ、是が主人だ」
 新「左様で、初めまして、私《わたくし》は江戸の者で、小商《こあきない》を致します新吉と申す不調法者、此地《こちら》へ参りましたが、雷鳴《かみなり》が嫌いで此方様《こちらさま》へ駈込んだ処が、お留守様でございますから泊《とめ》る訳にはいかぬと仰しゃって、お話をして居る処で、よくお帰りで、何卒《どうぞ》今晩一晩お泊め下されば有難い事で、追々夜が更けますから、何卒一晩|何様《どん》な処でも寝かして下されば宜しいので」
 甚「好《い》い若《わけ》え者《もん》だ、いゝや、まア泊って行きねえ、何《ど》うせ着て寝る物はねえ、留守勝《るすがち》だから食物《くいもの》もねえ、鍋は脇へ預けてしまったしするから、コロリと寝て明日《あした》行きねえ、己と一緒に寝ねえ」
 新「ヘエ、有難う存じます」
 清「己《おら》ア帰《けえ》るよ」
 
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