甚「まア/\宜《い》いやな」
 清「己ア帰るべい、何か、手が這入《へえ》ったか」
 甚「困ったからボサッカの中へ隠れて居たので、お前《めえ》帰《けえ》るならうっかり往《い》っちゃアいけねえ、今夜ボサッカの脇に人殺しが有った」
 清「何処《どこ》に」
 甚「己がボサッカの中に隠れて居ると、暗くって分らぬが、きゃアと云う声がノウ女の殺される声だねえ、まア本当に殺される声は今迄知らねえが、劇場《しばい》で女が切殺される時、きゃアとかあれイとか云うが、そんな事を云ったってお前《めえ》には分らねえが、凄《すご》いものだ、己も怖かった」
 清「怖《おっ》かねえ、女をまア、何《なん》てエ、人を殺すったって村方《むらかた》の土手じゃアねえか、ウーン怖かなかんべえ、ウーン何《ど》うした」
 甚「何うしたって凄いやア、うっかり通って怪我《けが》でもするといけねえから、其の野郎は刀や何かで殺す程の者でもねえ奴で、鎌で殺しゃアがったのよ、女の死骸は川へ投《ほう》り込んだ様子、忌々《いめえま》しい畜生《ちきしょう》だ、此の村へも盗人《ぬすっと》に這入《へえ》りやアがるだろうと思うから、其の野郎の襟首《えりくび》
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