、知らぬ土地で人を殺し、殊《こと》に大雨に雷鳴《かみなり》ゆえ、新吉は怖い一三眛《いっさんまい》、早く逃げようと包を脊負《しょ》って、ひょっと人に見られてはならぬと慄《ふる》える足を踏締めながらあせります。すると雨で粘土《ねばつち》が滑るから、ズルリ滑って落ちると、ボサッカの脇の処へズデンドウと臀餅《しりもち》を搗きまする、とボサッカの中から頬冠《ほゝかぶり》をした奴がニョコリと立った。此の時は新吉が驚きましたの驚きませんのではない。
新「ア」
と息が止るようで、後《あと》へ退《さが》って向《むこう》を見透《みすか》すと、向の奴も怖かったと見えて此方《こっち》を覗《のぞ》く、互《たがい》に見合いましたが、何様《なにさま》真の闇で、互に睨《にら》みあった処が何方《どっち》も顔を見る事が出来ません。新吉は電光《いなびかり》の時に顔を見られないようにすると、其の野郎も雷《らい》が嫌いだと見えて能《よ》く見る事も致しません。電光の後で闇《くら》くなると、
男「この泥坊」
と云うので新吉の襟を掴みましたが、是は土手下の甚藏《じんぞう》と云う悪漢《わるもの》、只今|小博奕《こばくち》をして
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