いわね、見捨てれば此方《こっち》が困るからね」
久「旨く云って、見捨てるよ」
新「何故そう思うんだね」
久「何故だって、新吉さん私は斯《こ》んな顔になったよ」
新「えゝ」
と新吉が見ると、お久の綺麗な顔の、眼の下にポツリと一つの腫物《しゅもつ》が出来たかと思うと、忽《たちま》ち腫れ上ってまるで死んだ豊志賀の通りの顔になり、膝に手を突いて居る所が、鼻を撮《つま》まれるも知れない真の闇に、顔ばかりあり/\と見えた時は、新吉は怖い三眛《ざんまい》、一生懸命無茶苦茶に鎌で打《ぶ》ちましたが、はずみとは云いながら、逃げに掛りましたお久の咽喉《のどぶえ》へ掛りましたから、
久「あっ」
と前へのめる途端に、研澄《とぎす》ました鎌で咽喉を斬られたことでございますから、お久は前へのめって、草を掴んで七転八倒の苦しみ、
久「うゝン恨めしい」
と云う一声《ひとこえ》で息は絶えました。新吉は鎌を持ったなり
新「南無阿弥陀仏/\/\」
と一生懸命に口の中《うち》で念仏を唱えまする途端に、ドウ/\と云う車軸を流すような大雨、ガラ/\/\/\/\と云う雷鳴|頻《しき》りに轟《とゞろ》き渡るから
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