う/\二眼《ふため》と見られない醜《いや》な顔。
新「些《ちっ》とは快《いゝ》かえ」
豐「あい、新吉さん、私はね何《ど》うも死度《しにた》いよ、私のような斯《こ》んなお婆さんを、お前が能く看病をしておくれで、私はお前の様な若い奇麗《きれい》な人に看病されるのは気の毒だ/\と思うと、猶《なお》病気が重《おも》って来る、ね、私が死んだら嘸《さぞ》お前が楽々《らく/\》すると思うから、本当に私は一時《いちじ》も早く楽に死度いと思うが、何うも死切《しにき》れないね」
新「詰らない事を云うもんじゃアない、お前が死んだら私が楽をしようなどゝそんなことで看病が出来るものでは無い、わく/\そんな事を思うから上《のぼ》せるんだ、腫物《できもの》さえ癒《なお》って仕舞やア宜《い》いのだ」
豐「でもお前が厭《いや》だろうと思って、私はお前|唯《たゞ》の病人なら仕方もないけれども、私は斯《こ》んな顔になって居るのだもの」
新「斯んな顔だって腫物だから癒《なお》れば元の通りになるから」
豐「癒ればあとが引釣《ひっつり》になると思ってね」
新「そんなに気を揉《も》んではいけない、少しは腫《はれ》が退《ひ》いたようだよ」
豐「嘘をお吐《つ》きよ、私は鏡で毎日見て居るよ、お前は口と心と違って居るよ」
新「なに違うものか、私は心配して居るのだ」
豐「あゝもう私は早く死度い」
新「お廃《よ》しよ、死《しに》たい/\って気がひけるじゃアないか、些《ちっ》とは看病する身になって御覧、何《なん》だってそんなに死度いのだえ」
豐「私が早く死んだら、お前の真底《しんそこ》から惚れているお久さんとも逢われるだろうと思うからサ」
十七
新「あゝいう事を云う、お前は何《なん》ぞと云うとお久さんを疑《うたぐ》って、ばんごと云うがね、私とお久さんと何か訳があると思って居るのかえ」
豐「それはないわね」
新「ないものを兎や角云わなくっても宜《い》いじゃアないか」
豐「ないからったっても、私と云うものがあるから、お前が惚れているという事を、口にも出さず、情夫《いろ》にもなれぬと思うと、私は本当に気の毒だから私は早く死んで上げて、そうして二人を夫婦にして上げたいよ」
新「およしな、そんな詰らぬ事を、仕様がないな、本当にお前も分らないね、お久さんだって一人娘で、婿を取ろうと云
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