り》でも構わぬからずぶ/\突《つッ》ついて一角を殺すが好《い》いどうじゃ」
隅「本当に有難いこと、嘸《さぞ》旦那様が草葉の蔭でお喜びでございましょう、関取私は殺されてもいゝから旦那様の敵《かたき》を取って」
母「何分にもよろしくねがえます」
花「余り敵/\と云わないがいゝ、私《わし》は先へ帰りますから」
と脇差を元の如く包んで帰りました。後《あと》へ入《い》り替って帰りましたのは山倉富五郎、
富「ヘエ只今帰りました」
母「富や、大層|帰《けえ》りが遅かったね」
富「なに帰り掛けに法蔵寺様へ廻りまして、幸い好《い》い花がありましたからお花を手向《たむ》けましたが、お墓に向いましてなア、実に残念でございまして、何《なん》だか此間《こないだ》まで富/\と仰しゃったお方がまアどうも、石の下へお這入りなすったかと存じましたら胸が痛くなりまして、嫌な心持で、又|家《うち》へ帰って貴方がたのお顔を見ると、胸が裂《さ》ける様な心持、仏間に向って御回向《ごえこう》致しますると落涙《らくるい》するばかりで、誠にはや何《な》んとも申そう様はありません」
母「まア能く心に掛けて汝《われ》が墓参《はかめえ》りするって、嘸《さぞ》草葉の蔭で喜んでいるベエ」
富「どうも別に御恩返しの仕方がありませんから、お墓参りでもするより外《ほか》仕方がありません、仏様にはお念仏や花を手向けるくらいで、御恩返しにはなりませんが、それより外に仕方がありません、ヘエ」
隅「あの富さん先刻《さっき》花車関が悔みに参りましたよ」
富「おや/\/\左様でござりましたか、ヘエ成程|何《ど》うなすったか、御存じないのかと思いましたが」
母「ナニ知ってたてや、知ってたけれども早く来て顔を見せたら、深《ふけ》え馴染の中だで思出《おめえだ》して歎《なげ》きが増して母様《かゝさま》が泣くべえ、それに種々《いろ/\》用があって来《き》ねえでいたが悪く思ってくれるなって、大《でか》い身体アして泣いただ」
富「そうでげしょう、兄弟の義を約束した方でございますから嘸《さぞ》御愁傷でげしょうお察し申します」
母「就《つい》てねえ、あの関取が他《わき》へ金え二百両貸した処が、向《むこう》の奴がずりい奴で、返さなえで誠に困るから、どうか富さんを頼んで掛合って貰《もれ》えてえ、富さんの口前で二百両取れたら百両礼をするて
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