い奴だが心に情《なさけ》のない慾張った奴だから、事に依ったら一角にお出で/\をされて鼻薬を貰うて、一角の方に付いて、彼奴《あいつ》が手引をして殺させやアせんかと思う、それ此の通り抜けぬのに抜いて切合ったというのが第一おかしいじゃないか」
母「あれやまア其処《そこ》らには気が付かんで、只まア魂消てばいいました、ほんにそうかもしんねえよ、其の頭巾|冠《かぶ》ったのはどんな恰好だっきゃア」
花「それは暗《やみ》だから確《しっか》り分らんが、一角じゃないかと私《わし》の心に浮《うか》んだ、斯《こ》うしておくんなさい、私は黙って帰るが、富五郎が帰ったら、今日花車が悔《くや》みに来て種々《いろ/\》取《とり》こんだ事があって遅くなった、就《つい》ては他《わき》へ二百両ばかり貸したが、どう掛合っても取れないから、どうかして取ろうと中へ人を入れたが、何分《なにぶん》取れないが、若《も》し富五郎さんが間へ這入ったら向《むこう》の奴も怖いから返すだろう、若しお前の腕から二百両取れたら半分は礼に遣るが、どうか催促の掛合に往ってくれまいかと、花車が頼んだが行って遣らんかといえば、慾張《よくばっ》ているから屹度《きっと》遣って来るに違いない、法恩寺村の私の処へ来たら富五郎さん/\というて富五郎を側に寄せ、腕を押えてさア白状しろ、一角に頼まれて鼻薬を貰って、惣次郎さんを殺したと云え、どうだ/\いわなけりゃア土性骨《どしょうぼね》を殴《どや》して飯を吐かせるぞ、白状すれば、命は助けて遣るというたら、痛いから白状するに違いない、実は是れ/\/\/\であると喋ったら旨いもんで然《そ》うしたら富五郎はくり/\坊主にして助けても好《よ》し、物置へ投《ほう》り込んでも好《い》いが、愈々《いよ/\》一角と決ったらお隅|様《さん》は繊細《かぼそ》い女、お母様《っかさん》は年を取って居り、惣吉|様《さん》はまだ子供だから私が先へ行きます、一角の処へ行って、偖《さて》先生大生郷の天神前で、飛んだ不調法を致しましたが何卒《どうか》堪忍しておくんなさいと只管《ひたすら》詫びる、然《そ》うすれば斬ることは出来ぬからうっかり近寄る近寄ったら両方の腕を押えて動かさぬ、さア手前《てめえ》が惣次郎を殺した事は富五郎が白状した、敵《かたき》を取るから覚悟をしろと腕を押えた処へ、お前|様《さん》が来て小刀《こがたな》でも錐《き
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