から一日たって居るので粘って抜けない、脇差の抜けませんのにいら立つ処を又《ま》た一刀《ひとかたな》バッサリと骨を切れるくらいに切り込まれて、向《むこう》へ倒れる処を、又|一刀《ひとかたな》あびせたから惣次郎は残念と心得て、脇差の鞘ごと投げ付けました、一角がツと身を交《かわ》すと肩の処をすれて、薄《すゝき》の根方《ねがた》へずぽんと刀が突立《つった》ったから、一角は血《のり》を拭いて鞘に収め、懐中へ手を入れて三十両の金を胴巻ぐるみ盗んで逃げようとすると、向の方から蛇の目の傘を指《さ》し、高足駄《たかあしだ》を穿いて、花車重吉という角力が参りました時には、一筋道《ひとすじみち》で何処《どこ》へも避《さ》けることが出来ません、一角は狽《うろた》えて後《あと》へ帰ろうとすれば村が近い、仕方がないからさっさっと側の薄畳の蔭の処へ身を潜め、小さくなって隠れて居ります。此方《こちら》は富五郎はバッサリ切った音を聞いて、直《すぐ》に家《うち》へ駈けて行《ゆ》く、其の道すがら茨《いばら》か何かで態《わざ》と蚯蚓腫《みみずば》れの傷を拵《こしら》えましてせッ/\と息を切って家《うち》へ帰り
*「けしかけるおだてるそゝのかす」
 富「只今帰りました」
 という。処が富五郎ばかり帰ったから恟《びっく》りして、
 隅「おや富さんお帰りかい何《ど》うかおしかえ」
 富「ヘエもう騒動が出来ました、あの弘行寺の裏林へ掛ったら悪漢《わるもの》が十四五人ででで出まして、二人とも懐中の金を出せ身ぐるみ脱いで置いて行《ゆ》けと申しましたから、驚いて旦那に怪我をさせまいと思いまして、松の木を小楯《こだて》に取りまして、不埓至極な奴だ、旦那を何《なん》と心得る、羽生村の名主様であるぞ、粗相をすると許さんぞというと、大勢で得物《えもの》/\を持って切って掛るから、手前も大勢を相手に切り結び、旦那も刀を抜いて切り結びまして、二人で大勢を相手にチョン/\切結んでおりましたが、何分多勢に無勢旦那に怪我があってはならぬと思って、やっと一方を切り抜けて参りました、此の通り顔を傷だらけにして…早くお若衆《わかいしゅ》早く/\」
 と誠しやかにせえ/\息を切っていいますから、お隅は驚いて、それ早く/\というので、村の百姓を頼んで手分《てわけ》をして、どろ/\[#「どろ/\」に傍点]押して参りましたが、もう間に合いは致しません
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