つもお噂ばっかりして居たの、好《よ》く………おやそうお寺参り………私もね一寸お尋ね申したいと思っても、御存じの通り一人体《ひとりからだ》で、皆《みん》な私にばかり押附けてあるもんだから、私は何処《どっこ》にも出ることが出来ないの………じゃアね奥の六畳の方へ(下女の方をふり向きて)もうお帰りになったろう………汚れて居るか………あゝ、じゃ縁側附の方が宜かろう、あの八畳の方へ御案内申しな」
婢「じゃア此方《こちら》へ入らっしゃいまし」
 と婢《おんな》の案内でもって八畳の間に通ります。
庄「何が有る」
 と云うと相変らず、
婢「小田巻蒸《おだまきむし》に玉子焼、お刺身が出来て塩焼が有ります」
庄「たんとは飲めない口だが一本|燗《つ》けてくれ」
 と云う中《うち》に懐かしいから女房が取巻きに出て来た。
妻「まことにまア御無沙汰………好《よ》くねえ」
美代「私も誠に御無沙汰いたしました」
妻「好《よ》いことね、此の間も稻《いね》ちゃんだの小しめさんも来てね、噂たら/″\さ、心掛けの善《い》い人というものは、まア誠に妙なものだ、美代ちゃんのくらい運のいゝ人は無い、世にはとんだ者に騙《だま》されて、
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