向けて、お寺には縁類の者であると云って附届《つけとゞけ》を致し、出て来ますると、ぽつうり/\と秋の空の変り易く降り出して来ました。
庄「困ったな降って来たよ、何処かへ往ってお飯《まんま》でも食べて雨を止《や》めようじゃア無いか」
美「出る時は降るだろうと思ったから、蝙蝠傘《こうもりがさ》だけは持って来たが、沢山《たんと》の降りも有りますまいか」
 と夫婦で車坂の四ツ辻まで来ますと、後《あと》から汚ない車夫《くるまや》が、
車夫「えゝ若《も》し旦那え、帰り車でございますから、お安くお幾許《いくら》でも宜《い》いんですが……へい何方《どちら》で、日本橋の方へお帰りですか、日本橋なれば、私《わたし》も彼方《あっち》の方へ帰るんですが何方なんですか、四ツ谷の方に、へえ私《わたくし》も牛込の方へ帰りでげすが」
 何処へ帰り車だか分らない。
庄「まア宜《い》い、車が汚いから、あゝ大変に降って来た」
美「私《わちき》は久振《ひさしぶり》ですから長者町《ちょうじゃまち》の福寿庵《ふくじゅあん》へ往っておらいさんに逢って、義理をして往《ゆ》きたいんですが、帰りに他家《ほか》へ寄ってお飯《まんま》を食べる
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