押掛《おしかけ》のお座敷に往っても御祝儀は下さいませんから誠に困りますよ、お歳暮《せいぼ》の時なんぞは御祝儀処か、おやお出でかえ誠に取込んで居るからと云うんで、無しさ、幇間《たいこもち》なんどは暮はいけませんなア、来春《くるはる》を待つのですが、お母さんなんぞは土用が来ても歳暮が来ても福々しいね」
婆「何うして大違《おおちがい》さ、それに彼《あ》の奧州屋の旦那がね、ソレあの時お前も落合って身請ってえから少し苦しい処だから丁度|好《い》い塩梅だと極りがついて、明後日《あさって》は身請というから当《あて》にして、私もその支度もし、別に抱えも仕たいと思うからそれに当箝《あては》め、借金も返す約束に成っている処が、ぽかりと外れてしまった実に困ったのサ、だがね何うしてあの方があんな死様《しによう》を為すったろう」
三「解らないよ、泥濘《ぬかるみ》へ踏込んでも、どっこい悪い処へ来たと後《あと》へ身体を引いて、一方《かた/\》の足は汚さねえと云う方だが」
婆「それが何うも腹を切るなんてえのは」
三「なに矢張《やっぱ》り洋物屋《とうぶつや》の旦那様でも、元が士族|様《さん》の果《はて》で、何かで行詰っ
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