らお渡し申す……エお分りに成りましたか」
聞く事ごとに庄三郎、
庄「はあア左様な事で有ったか」
と。只茫然といたして、どっどと降る中にべた/\/\と坐った。
庄「左様とは心得ませんで……どうも誠に失敬(失敬たって殺しちまっては間に合いませんねえ)何うかお助かりは……」
奧「えいや助からん」
と苦しい中で懐から金《かね》を取り出し、
新「……五百円、それに此の金側《きんがわ》の時計も別して記《しるし》のある訳でない、お持料《もちりょう》になされて下さい、他《ほか》の物は記が有りますから………此処にあなた様が居ると、もし夜廻りの者が参っては相成りませんから、お早く往って、何うぞ早く往って下さい……急にお身請になると感付かれると成りません、一二ケ月経ってからでございますぜ、お早く/\」
早く/\という声も最う息も急《せわ》しゅうなりまする様子。此の頃は巡査という役もございませんけれども折々は邏卒という者が廻りました時分で、雨は降りますけれども妻恋坂下、何う成るか此方《こちら》も怖いのに心急《こゝろせ》くから、其の儘に藤川庄三郎は、五百円と時計と持って御成街道《おなりかいどう》の方《か
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