いうのです、そりゃア何方《どちら》でも評判です、あのように沈著《おちつ》いて居る方がね何うも」
美「ちょっと三八さん、あの何だね、一昨年《おととし》の九月四日にね………贔屓だって情夫《いろ》でも何でも無いのですが………あの晩にお帰りなさらなきゃア彼様《あん》なことは無いものを……あれをお帰んなすった晩だよ」
三「そうですな、何ういう訳でがしょうな、あれは」
ふみ「はい何うも御検屍を願いまして腹を切ったという事には成りましたけれども、もう実は仰しゃる通り沈著者《おちつきもの》で、種々《いろ/\》に分別して、人という者は事を落著《おちつ》け心を静めて見れば、何《ど》んな事でも死なずに済むものだと申して、己《おれ》なんぞは是まで苦労をして来たから何んな貧乏に零落《おちぶ》れても困りはしない、又工面が宜く成っても困りはしない、何でも詰らない事をくよ/\思うな、心を広く持ってと、一寸寝酒を飲みましては私共の心の落著くように云ってくれまする、貯えて居りました金子は他人《ひと》の預かり物ですが、それが有りませんでしたから、多分|盗賊《ものどり》だろうと思います、それに金側《きんがわ》の時計がございま
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