を載《の》せ、すーツと小笠原流《をがさはらりう》の目《め》八|分《ぶ》に持《もつ》て出て来《き》ました。「是《これ》は何《ど》うもお姫様《ひめさま》恐入《おそれいり》ます、へい/\有難《ありがた》う存《ぞん》じます。姫「アノ町人《ちやうにん》、お前《まへ》代《かはり》を喫《た》べるか。「へい/\有難《ありがた》う存《ぞう》じます、何卒《どうぞ》頂戴致《ちやうだいいた》したいもので。姫「少々《せう/\》控《ひか》へて居《ゐ》や。「へい。慌《あは》てゝ一|杯《ぱい》[#「一|杯《ぱい》」は底本では「一|抔《ぱい》」]掻込《かつこ》み、何分《なにぶん》窮屈《きうくつ》で堪《たま》らぬから泡《あは》を食《く》つて飛出《とびだ》したが、余《あま》り取急《とりいそ》いだので莨入《たばこいれ》を置忘《おきわす》れました。すると続《つゞ》いてお姫様《ひめさま》が玄関《げんくわん》まで追掛《おつかけ》て参《まゐ》られて、円朝《わたくし》を喚留《よびとめ》たが何《ど》うも凜《りゝ》々しくツて、何《なん》となく身体《からだ》が縮《ちゞ》み上《あが》り、私《わたくし》は縛《しばら》れでもするかと思ひました。姫「コレ/\町人《ちやうにん》待《ま》ちや/\。「へい、何《なに》か御用《ごよう》で。姫「これはお前《まへ》の莨入《たばこいれ》だらう。「へい、是《これ》は何《ど》うも有難《ありがた》う存《ぞん》じます。姫「誠に粗忽《そこつ》だノ、已後《いご》気《き》を附《つき》や。「へい恐《おそ》れ入《い》りました。どつちがお客だか訳《わけ》が分《わか》りませぬ。是《これ》から始《はじ》まつたのでげせう、ごぜん汁粉《じるこ》といふのは。



底本:「明治の文学 第3巻 三遊亭円朝」筑摩書房
   2001(平成13)年8月25日初版第1刷発行
底本の親本:「定本 円朝全集 巻の13」世界文庫
   1964(昭和39)年6月発行
入力:門田裕志
校正:noriko saito
2009年6月19日作成
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