ので」
 主人「処が昨夜《ゆうべ》己《おれ》が確《たしか》に認めた、余り憎い奴だから、一思いに打斬《ぶちき》ろうかと思ったけれど、イヤ/\仲に勝五郎が這入って居るのに、貴様に無断で伊之助を、無暗《むやみ》に己が打《ぶ》つも縛るも出来ぬから、そこで貴様を呼びにやったんだ、だから其処《そこ》で立派に申開《もうしひらき》をしろ」
 勝「ヘエー、それは何うも済まねえ訳で、本当に何うも見損った奴で」
 主人「まア己の方で見ると、貴様は金子《かね》を伊之助にやりはすまい、好《よ》い加減な事を云って金子を取って使っちまったろうと疑られても仕様がないじゃアないか、店《たな》の主人《あるじ》は女の事だから」
 勝「エ、御尤もで、じゃア私《わっし》は是から直《すぐ》に行って参ります、申訳がありませぬから、あの野郎、本当に何うも戯《ふざ》けやアがって、引張って来て横ずっ頬《ぽう》を撲飛《はりと》ばして、屹度《きっと》申訳をいたします」
 其の儘|戸外《おもて》へ飛出して直に腕車《くるま》[#「くるま」は底本では「くまる」と誤記]に乗り、ガラ/\ガラ/\と両国|元柳橋《もとやなぎばし》へ来まして、
 勝「師匠
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