で》なさるし、何うかお気の紛れるようにと思って、私《わっし》ア身許《みもと》から知ってる堅《かて》え芸人でげすから、私が勧めて堺屋のお店《たな》へ出入《でいり》をするようになると、あんな優しい男だもんだから、皆さんにも可愛《かあい》がられ、お内儀《かみ》さんも飛んだ良い人間だと誉めて居らしったから、お世話|効《がい》があったと思って居ました、処がアヽ云う訳になったもんですから、お内儀さんが、此金《これ》で堺屋の閾《しきい》を跨《また》がせない様にして呉れと仰しゃって、金子《かね》をお出しなすったから、ナニ金子なんざア要りませぬ、私が行《ゆ》くなと云えば上《あが》る気遣いはごぜえませんと云うのに、何《なん》でもと仰しゃるから、金子を請取《うけと》って伊之助に渡し、因果を含めて証文を取り、お嬢さんのお供をしてお宅へ出ましたッ切《きり》で、何うも大きに御無沙汰になってますので」
 主人「ナニ無沙汰の事は何うでも宜《よ》い、が、其の大金を取って横山町《よこやまちょう》の横と云う字にも足は踏掛《ふんが》けまいと誓った伊之助が、若の許へ来て逢引をしては済むまいナ」
 勝「ヘエー、だッて来る訳がねえ
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