すが」
 伊「鳶頭まア左様《そう》云わずと何うかね、今日のとこは見逃しておいておくんなさい、私もまたお嬢さんをお諭《さと》し申して綺麗さっぱり諦らめるようにするからねえ、決してお前さんの面《かお》は潰さないから」
 といろ/\と勝五郎を賺《すか》しこしらえるうちに、切れるような言葉あるをきゝましたお若は、プッと頬をふくらすのを見ましたから、眼付で合図いたし、ヤッと勝五郎を追いかえしますると、
 若「伊之さん何うしょうねえ、この事が伯父さんに知れた日にゃア大変だから」
 伊「さア何うしたら宜かろうか知らん」
 若「いっその事、私をつれて逃げておくれでないか」
 伊「そんな事をしては猶更すまねえから」
 若「あれさ、此様《こんな》ことになってゝ済むのすまぬということがあるものかねえ、私がこんな形《なり》だからお前さん外聞がわるいんで」
 伊「ナニ其様《そんな》ことはないけれど、斯うして来ているのさえ面目ないのだに、其の上また連出しては」
 若「嫌《いや》なんだね、嫌ならいやでいゝよ、お前さんに捨てられちゃア」
 と突然《いきなり》仏壇の引出から剃刀《かみそり》を取出し自害の体に見えます。お
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