飛《とん》で来たんだ、今日雨降りで丁度仕事がねえから先生のとこへ来てるとよ、書生さんが此処《こゝ》から帰《けえ》って来て、お若さんのとこには泊客《とまりきゃく》があるらしいと云ったを、先生がきいて、若い女のとこへ泊客たア捨ておかれん、己が直ぐ往って実否《じっぴ》を正して来ると支度をするじゃアねえか、私アまさか伊之さんが来ていようとは思わねえけれど、お嬢さんだってまだ若い身そらだ、若《も》しひょっとどんな虫が咬《かじ》りついたか知れねえと思ったからよ、ナニ旦那がいらっしゃるまでもねえ私が見届けて参《めえ》りますから……来て見ればこれだからね実に恟《びっく》りしたじゃねえか、エ、これが若し旦那に来られて見ねえ何様《どんな》騒ぎになるか知れたもんじゃねえ」
と云れてお若は忽《たちま》ち震いあがりましたが、態《わざ》と落付きはらって、
若「鳶頭《かしら》後生だから、伊之さんの来ていることはねえ、私が一生のお頼みだから」
勝「エヽそりゃア宜《よ》うがすがね、困ッちゃうなア、切れろッて云ったって此の様子じゃアとても駄目だ、これが何時《いつ》までも分らずにいりゃア私《わっち》も知らん顔していや
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