人は持ちますまいと心に定めてこんな姿になってるんだからね」
勝「こりゃ驚きやした、手放しの惚気《のろけ》てえのア、じゃア何《なん》ですね、お嬢さんは野郎を引ずり込んだッて好《い》いと仰しゃるんでげすね」
若「あれまア、引摺りこんだなんて、そんな体《てい》の悪いことをお云いでないよ」
勝「だって左様《そう》じゃげえせんか……、これが伯父さんに知れたら何うなさる御了簡でげすえ、伊之さんお前《めえ》だって左様じゃねえか、いくらお嬢さんが何《なん》と仰しゃるにしろよ、ノメ/\這入《へえ》りこんでそゝのかすてえことはねえ筈」
と鉾先は伊之助に向きまする。
伊「鳶頭《かしら》まことに面目ない……、私もお若さんが尼になっていなさりょうとは思いもかけず、此処《こゝ》らをうろつくうちにお嬢さんが伊之さんかというような訳から、段々と様子をきいて見れば私風情に操《みさお》をたてゝ下さるお志が何うも知らぬと申しにくゝ、鳶頭の前だが誠に申訳のない次第」
勝「なんだッて、エ、お前《めえ》までが一緒になって惚《のろ》けるてえことがあるもんか、コウ伊之さんよく聞きねえ、私《わっち》アお前さん方の為を思って
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