は別人ではございません、そゝっかしやの鳶頭《とびがしら》勝五郎でげすから、ハッと驚きましたが、まだしも伯父の晋齋でないだけが幾らか心に感じ方が少ないと申すようなものではあるが、何《なん》にいたせ二人とも面目ない始末……とんだところへと赤面の体《てい》で差しうつぶいて居ります。勝五郎も驚きましたね、まさか伊之助が此処《こゝ》へ来ていようとは夢にも思いませんから、暫くはじろり/\二人の様子を見ておりましたが、
 勝「師匠……いやさ伊之さん、まア何うしたんだ……何うして此処に来ているんだ」
 と申して膝を伊之助の方へすゝめますが、何《なん》とも返答をいたす事が出来ないんで……矢ッ張黙ってモジ/\と臀《いしき》ばかりを動かし、まるで猫に紙袋《かんぶくろ》をきせましたように後《あと》ずさりをいたしますんで、勝五郎は弥々《いよ/\》急《せ》きたちまして、
 勝「エ、何うしたんだな、お前《めえ》さんがこんな戯《ふざ》けた真似をしちゃア済むめえが、お前さんばかりじゃねえや、私《わっち》が第一《でえいち》お店《たな》に申訳がねえ、手切金までとって立派に別れておきながら……何《なん》てえこったアな、オイ伊
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