朝来た使いが変だと思やアそう云うだろうから油断はしていられないよ、見付《みつか》って仕舞ってから幾ら悔しがっても取って返しが付かないから」
若「そうねえ」
とは申しますものゝ、ドシ/\雨の降ってる最中に可愛い情夫《おとこ》を出してやるは、何うも人情|仕悪《しにく》いものでございますんで、お若さんは頻りに止めますから、伊之助もそれではと小歇《こやみ》になるまで見合すことにいたし、立膝をおろして煙草を呑もうといたすと、ざア/″\/″\という音が庭でするは、丁度傘をさして人の立《たっ》てゞもいるように思われますんで、疵もつ足の二人は驚きあわて顔見合せましたが、がらりと障子をあけて誰が来たと確めることが出来ません。そうかと申して伊之助が今逃げ出してはます/\疑われる種とおもいますから、うかといたした事をして毛を吹いて疵を求めるも馬鹿々々しいと、只二人ともはら/\と胸を痛めて居りますると、暫くして縁先で咳ばらいをいたすものがある。お若も伊之助も最《も》う堪らなくなりましたから、先《ま》ず伊之助が逃げ出しにかゝるを、
○「二人とも逃げるにゃア及ばねえ」
とがらり障子をあけて這入ってまいった
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