ゝくを聞えぬ振して態《わざ》と縁側の戸をガラ/\明けております。表では頻《しき》りにトン/\/\/\と叩いて、
 吉「オイお若さん何うしたんだい、こんな寝坊することがあるもんか、早く開けて下さいよ」
 若「おや吉澤《よしざわ》さんですか……何うも御苦労でしたことねえ、今朝はとんだ寝坊をしましてねえ……大層おたゝかせ申しましたか、ほんとにすみませんこと」
 吉「ハヽア珍らしいですな、あなたがこんなに朝寝をするは……ハヽヽヽ」
 例《いつも》の通り飯櫃《おはち》と鍋を置いて帰ったので、まア好《よ》かったと胸なで下《おろ》しまして、それから伊之助も戸棚より這出して参り、直ぐに帰ろうというを、お若は丁度あったかい御飯が来たとこだからと、無理に止めまして少し冷めた味噌汁《おみおつけ》をあっため、差向いで朝飯《あさはん》を仕舞まする。
 若「伊之さんこんなに降って来たから……大丈夫来やしないわ、帰るにしても些《ちっ》と小止《こやみ》になるまで見合《みあわ》してお出《いで》でないとビショ濡になっちまうわ」
 伊「まさか此の降りに伯父|様《さん》が見廻りもなさるまいとア思うがね、あんな人ではあるし、今
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