客様に誠に向きが悪いようでげすが、今日《こんにち》だって因果の輪回《りんね》しないという理由《わけ》はないんで、なんかんと申しますると丸で御法談でも致すようで、チーン……南無阿弥陀仏といい度《たく》なり、お話がめいって参ります。と云ってこのお話を開化ぶりに申上げようと思っても中々|左様《そう》はお喋りが出来ません。全体が因果という仏くさいことから組立られて世の中に出たんでげすからね。何も私《わたくし》が好《すき》このんで斯様《かよう》なことを申すんではありません。段々とまア御辛抱遊ばして聴いて御覧《ごろう》じろ、成程と御合点なさるは屹度《きっと》お請合申しまする。エーお若伊之助の二人は悪縁のつきぬところでござりましょうか、再び腐れ縁が結ばりますると人目を隠れては互に逢引をいたす。お若さんの家《うち》は夜分になると伯父の晋齋が偶《たま》さか来るぐらいで、誰も参るものはございません、尤《もっと》も当座は若いお比丘さん独りで嘸《さぞ》お淋しかろうなぞと味なことを申して話しに押掛けて参った経師屋《きょうじや》もないでもなかったが、日が暮れると決して人を入れないので、左ほど執心して百夜通《もゝよ
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