》えぬ所存で…これこの通り仏に誓う世捨人になりました、伊之さん何うか察して下さいとほろりとさせる処でげすが、其様《そんな》ケレン手管《てくだ》なんどは些《ちっ》ともないお若さんですから、実は斯々云々《かく/\しか/″\》の訳あってと真実《まこと》を話します。伊之助も恟《びっく》り仰天いたして、暫らくの間は口も利きませんでしたが、それも矢っ張り因縁というものでしょうから心配なさることはないと慰さめ、此の日は何事もなく帰りまする。次の日もまたお若さんの家《うち》へ寄って行《ゆ》く、その次の日もまた寄るというようになると、お若さんも元々|厭《いや》な者が来るんでないから其の時刻を待つ、伊之助も屹度《きっと》来る、何時《いつ》何ういう約束をするというでもなく、何方《どちら》から言出すというでもなく、再び焼棒杭《やけぼっくい》に火がつくことゝ相成りましたが、扨《さて》これからは何うなりましょうか、一寸《ちょいと》一服いたし次席でたっぷり申し上げましょう。

        四

 さて引続き申上げておりまする離魂病のお話で……因果だの応報だのと申すと何《なん》だか天保度のおはなしめいて、当今のお
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