いて、
若「それはそうとして何うして其様《そんな》ことを……」
伊「イヤ何うも面目次第もない、恥をお話し申さないと解らないんで、丁度あの鳶頭が来た翌日《あくるひ》でした、吉原《なか》の彼女《やつ》と駈落《かけおち》と出懸けやしたがね、一年足らず野州《やしゅう》足利《あしかゞ》で潜んでいるうちに嚊《かゝあ》は梅毒がふき出し、それが原因《もと》で到頭お目出度《めでたく》なっちまったんで、何時《いつ》まで田舎に燻《くすぶ》ってたって仕方がねえもんだから、此方《こっち》へ帰りは帰ったものゝ、一日でも食べずに居られねえところから、拠《よんどこ》ろないこの始末、芸が身を助けるほどの不仕合とアよく云う口ですが、今度はつく/″\感心してますよ」
若「それは/\さぞお力落し、御愁傷さまで……」
伊「悔みをいわれちゃ、穴へでも這入《へえ》りてえくれえでげすが、それにしてもお前さんこそ何うして其様《そんな》お姿におなんなすったんですえ」
場数ふんでまいった蓮葉者《はすッぱもの》でございましたなら、我が身の恥辱《はじ》はおし包んで……私《わし》は一旦極めた殿御にお別れ申すからは二度と再び男に見《まみ
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