さない訳にも参らぬところから、
伊「エー斯うなんですよ、あのお前さんとの一件がばれたんで、鳶頭《かしら》から手切の相談さ、ところで私《わし》もダヾを捏《こ》ねようとア思ったんだが、イヤ/\左様でない、私ら風情で大家《たいけ》の嬢様《じょうさん》と一緒になろうなんかッてえのは間違っている……こりゃア今切れた方が先方様《さきさま》のお為と思ったもんだからね、鳶頭の言うなり次第になって目を眠っていたんでげす、その後《のち》のことで……左様さ二月《ふたつき》も経ってからだッたでしょうよ、鳶頭が慌《あわ》てくさッて飛びこみ、私がお前さんのいなさる根岸へ毎晩忍んで逢いに行《ゆ》くてえじゃないか、あんまり馬鹿々々しいんで鳶頭をおいやらかしてやッたんでげす」
と云われてお若は深く恥いりましたか、俄《にわか》に真赤《まっか》になってさし俯《うつむ》いております。伊之助はそんなことは知りませんから、
伊「ほんとにあの鳶頭のあわてものにも困る……」
と一寸《ちょい》とお若を見ますると変な様子でげすから、伊之助も何《なん》となく白けて見え、手持無沙汰でおりますので、お若さんも漸《ようよ》う気が注《つ》
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