がよ》いをするものもなかったんでしょう。只今も申しまする通り夜分になれば伯父の目さえ除《よ》ければ憚《はゞか》るものはないんでげすから、お若さんも伊之助も好事《いゝこと》にして引きいれる、のめずり込むというような訳になって……伊之助は大抵お若さんのとこを塒《ねぐら》にしておりました。始めのうちこそお互いに人に見られまいと注意いたすから、夜が明けはなれると伊之助は飛び出すので、近所でも知らなかったが、左様《そう》都合のいゝことばかりはないものでな。惚《ほれ》た同士が二人きりで外《ほか》に誰もいないのでげすから、偶《たま》には痴話や口説《くぜつ》で夜更しをして思わぬ朝寝もしましょうし、また雨なんかゞ降るときはまだ夜が明けないと存じて、
 伊「もうおきる時分だろう、雨戸のすき間があかるくなって来た」
 若「ナニまだ早いよ、大丈夫だから……お月夜であかるいんだわ、今から帰らなくッてもいゝッてえば、私アねむくって仕様がないじゃないかね、モガ/\おしでないてえば」
 とお若が起しませんから、伊之助とて丁度寝心のいゝ時節、飛起きたくはありますまいて。すると……、毎朝照っても降っても欠かさずに屹度《き
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