付、あんなに私を見ているというは訳がわからない、此方《こちら》の気のせいか知らんが、顔立といい年格好といい伊之助さんに悉皆《そっくり》なんだから、イヤ/\左様《そう》であるまい、あの人があんな門付に出るまで零落《おちぶれ》るということはない筈、あゝ怖《おそろ》しや/\又も狸か狐にだまされた日にゃア、再び伯父様に顔合せることが出来ないというもの、それにしても訝しい、あの時は此方《こっち》で伊之さんの事ばかり思っていて逢度《あいたい》々々とそればかりに気を揉んでいたから、畜生なんかに魅入られたんだけれど、今度はそうでない、私も心に懸らない事はないが、あゝいう事があっては、伊之助さんも愛想をつかしたろうと諦めちまったから[#「諦め〜」は底本では「締め〜」と誤記]、些《ちっ》ともそんな気はないに、今日のあの門付、何う考えて見ても不思議でならない、と悶え苦しんで居りましたが、あゝ左様《そう》だ、仮令《たとえ》どんな者が来ようと身を堅固にしていさえすれば恐いことも怖しいこともない、若《も》し明日《あした》来たら疾《と》くと見てやろう、此方《こちら》からお鳥目でもやる振《ふり》をして、と待っておりま
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