て三味線弾くこともありますが、或日の事でございました、お若さんが生垣のうちで掃除をして居りますと、件《くだん》の門付は三味線を抱えて例《いつも》の通り遣って参り、不審そうに垣の内をのぞきこんで、頻《しき》りと首をかたげて思案をいたして居りましたが、また伸上って一生懸命に見ています。此方《こちら》のお若はそんな事は少しも知りませんで、セッセと掃除を了《おわ》り、ごみを塵取りに盛りながら、通りの賑《にぎや》かなのに気が注《つ》いてフイト顧盻《みかえ》りますと、此の頃|美男《びなん》と評判のはげしい一中節の門付が我を忘れて見ておりますから、尼さんにこそ成っていますものゝ未だ年も若く、修業の積んだ身というでもありませんから、パッと顔に紅葉《もみじ》を散らし※[#「※」は「つつみがまえ+夕」、第3水準1−14−76、452−5]々《そう/\》庵室に逃げこみました。左様《そう》すると門付も立去ったらしく三味線の音色が遠く聞えるようになりましたんで、お若の尼はドキン/\とうつ動悸《どうき》がやっと鎮まるにつけても、胸に手をおき考えれば考えるほど不思議で堪りません。何うも訝《おか》しいじゃないかあの門
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