間違の起る根ざしは春にあるそうでございます。殊に色事の出入《でいり》が夏の始めから秋口にかけて多いのは、矢ッ張り春まいた種が芽をふき葉を出して到頭世間へパッとするのでもござりましょうか。能く気を注《つ》けて御覧遊ばせ。まア左様《そう》した順に参っております。これは私《わたくし》が一箇《いっこ》の考えではござりません、統計学をお遣り遊ばした御仁は熟《よく》知ってお出《いで》なさる事で、何も珍しい説でも何《なん》でもないんでございます、と申すと私も大層学者らしい口吻《くちぶり》でげすが、実は何うもはやお恥かしい訳なんで、みんな御贔屓の旦那方から教えて頂く耳学問、附焼刄でげすから時々|化《ばけ》の皮が剥《は》げてな、とんだ面目玉を踏みつぶすことが御座いまする、ハヽヽヽヽ。扨《さ》て世捨人になったお若さんでげすが、伯父の晋齋に頼みまして西念寺《さいねんじ》の傍《わき》に庵室とでも申すような、膝を容《い》れるばかりな小家《こいえ》を借り、此処《こゝ》へ独りで住んで行いすまして居りまする。尤も伯父の家《うち》は直《じ》き近くでございますから、晋齋も毎日見廻ってくれるし、三食とも運んでくれるので自分
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