そんな人が肩を入れてる子供なら万更なことはあるまいと思いますので、大芳さんに此の事をはなすと、
 大「お前《めえ》が好《い》いと思ったら貰いねえな、何うせ己《おいら》が世話するんじゃねえから」
 と云うんで、おしゅんは直ぐ弟子を勝五郎の家《うち》へ迎えにやる。勝五郎は深川へ来て話をきくと雀躍《こおどり》して喜び、伊之吉もまた大芳のとこへ貰われて来ましたが、実に可愛《かあい》らしい好児《いゝこ》でげすから、おしゅんさんは些《ちっ》とも膝を下《おろ》しません。それ乳の粉《こ》だの水飴だのと云って育てゝ居ります。伊之吉もいつか大芳夫婦に馴染んで片言交りにお話しをするようになって、夫婦はいよ/\可愛くなりますが人情でござります。只《た》だ伊之や/\とから最《も》う[#「最う」は底本では「最も」と誤記]気狂《きちがい》のようで、実の親でもなか/\斯うは参らぬもので、伊之吉はまことに僥倖《しあわせ》ものでげす。高根晋齋は勝五郎の世話で両児《ふたり》を漸《ようよ》う片附けましたから、是れよりお若の身を落付けるようにして遣ろうと心配いたして、彼方此方《あっちこっち》へ縁談を頼んでおきますと、江戸は広い
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