子供やこども、子供はよろしゅうございッて」
 勝「こいつが又馬鹿を吐《こ》きやがる、最《も》う承知がならねえ、野郎何うするか見アがれッ」
 と拳をふり上げますから、傍《そば》にいるものも笑って見てもいられません。
 △「まア何うしたんだ、勝も余《あん》まり大人気ねえじゃねえか、熊の悪口《わるくち》は知ッてながら、廃《よ》せッてえば、下《くだ》らねえ喧嘩するが外見《みえ》じゃアあるめえ」
 と仲裁をする騒ぎでございます。勝五郎は友達が笑いものになるまでに熱心になって、何うか晋齋の依頼《たのみ》を果そうと心懸けて居りまする。すると深川の森下に大芳《だいよし》と申して、大層巾のきく大工の棟梁がございますが、仲間うちでは芳太郎《よしたろう》と云うものはない。深川の天神様で通っている男で頗《すこぶ》る変人でげす。何事でも芸に秀でて名人上手と云われるものは何うも変人が多いようで、それも決して無理のない訳だろうと思われるんでございます。私《わたくし》どもが浅慮《あさはか》な考えから思って見ますると、早い例《たとえ》が、我々どもでも何か考えごとをして居りますときは、側で他人様《ひとさま》から話を仕掛け
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