にも這入りかねましたと見え、腰にはさんでおります手拭でポン/\とはたき。
 勝「エー、只今はお使を下せえまして」
 婢「鳶頭旦那様がお待ちかねですから、さアお上りなさい、お奥の離座敷《はなれ》に在《いら》っしゃるんですよ」
 とお爨《さん》どんが案内に連れられ、奥へ参りますと、晋齋は四畳半の茶座敷で庭をながめて、勝五郎の参るのを待って入っしゃるところでございますから、
 晋「おゝ鳶頭か、よく早速来てくれたね」
 勝「只今はわざ/\のお使で、直ぐ飛んでめえりやした、ヘイ/\/\、何《なん》か急御用が出来たんでげすか、また伊之の野郎が参《めえ》ったんじゃアげえすめえな」
 晋「ハヽヽヽヽ気の早い男だな、左様《そう》来られて堪るものか、昨日《きのう》お出《いで》のときにお話であった事で、些《ちっ》とお頼み申したいから急に呼びに上げたのだよ」
 勝「ヘイ、じゃ何《なん》ですか、昨日|私《わっち》がお話し仕《し》やした一件……、ヘヽヽヽヽ憚《はゞか》りながら先生、左様《そう》申すと口巾《くちはゞ》ッてえ言草《いいぐさ》でげすが、ごろッちゃらして居アがる野郎の二三人|引摺《ひきず》って来りゃア訳の
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