てダヾを捏《こ》ねはせまいかと心配致し、ジッと顔をながめ挙動《ようす》をうかゞって居りましたが、伯父様のよいようにと思い切った模様ですから、まアよかった得心して呉れて、と胸を撫で、
 晋「あゝそれがいゝよ、己に任しておきな、悪いようにはしないからね、お前が左様《そう》諦めてくれゝば結構な訳というもんで……、実はな、大阪の商人《あきんど》で越前屋佐兵衞《えちぜんやさへえ》さんてえのが、御夫婦連で江戸見物に来ていなさるそうでの、何《なん》でも馬喰町《ばくろちょう》に泊ってると聞いたよ、この方がの最《も》う四十の坂を越えなすったそうだが、まだ子供が一人もないから、何うか好《い》い女の児《こ》があったら貰って帰りたいと探していなさるそうだよ、大阪《あっち》で越佐《えつさ》さんと云っては大した御身代で在《いら》っしゃるんだからね、土地で貰おうと仰《おっし》ゃれば、網の目から手の出るほど呉れ人《て》はあるがの、佐兵衞さんてえのは江戸の生れなんで、越前屋へ養子にへえッた方だから、生れ故郷が恋しいッてえところでの、江戸から子供を貰って帰ろうと仰しゃるんだとさ、それにお内儀《かみ》さんというのも飛んだ気
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