て御覧、決して無理を云って困らせようなんかッて云うんじゃないから……」
 若「何うしまして決して其様《そんな》こたア思やしません、そりゃ最《も》う伯父|様《さん》の仰しゃる通り……」
 と云い掛けてほろりと涙をこぼしましたが、晋齋に覚《さと》られまいと思いますので、俄《にわか》に一層下を向きますと、頬のあたりまで半襟に隠れ、襟足の通った真白《まっしろ》な頸筋はずッと表われました。お若の胸中を察し晋齋も不愍《ふびん》には思いますが、ぐず/\に済しておいては為になりませんことですから、眼をパチクリ/\致しながら、少しく膝を進ませました。
 世の中に何が辛いって義理ほど辛いものはないんで、我が身を思い生れた子供のことを心配してくれる伯父の親切を察しては、それでも私は斯うしたいの彼《あゝ》したいのと、勝手な熱を吹くことは出来ませんから、お若も是非がない、義理にせめられて、
 若「何うか伯父|様《さん》の好《よ》いようにして下さいませ、こんなに御苦労かけましたんですから……」
 と申して居るうち潤《うる》み声になって参ります。晋齋もお若が何《なん》というであろうか、若《も》しや恩愛の絆にからまれ
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