令《よし》何様《どんな》訳で出来たからってお前の子に違いないものだから、手放して他人《ひと》に遣《や》るは人情として仕悪《しにく》かろう、それは己も能《よ》く察してはいるが……、此の子供等が独り遊びでもするようになって見な、直《す》ぐ世間の人に後指さゝれて何《なん》と云われるだろうか、其の時のお前が心持は何うだろう、お前ばかりじゃないよ、お父様《とっさん》お母様《っかさん》をはじめ縁に繋がるこの己までが世間の口にかゝらんけりゃならんのだ、さア其の苦《くるし》みをするよりは今のうち……な、それにお前とて若い身そら、是なり朽ちて仕舞うにも及ばない、江戸は広いところだから、今度の噂も知らないものが九分九厘あるよ、ナニ決して心配する事はないからね」
 と晋齋がシンミリとした意見に、お若は我身に過《あやま》りのあることですから、何《なん》とも返答することが出来ません。只ジッと差し俯伏《うつむ》いて思案にくれて居ります。伯父の晋齋はお若が挨拶をしないのは不得心であるのか知らんと思われる処から、
 晋「お若、何うだね、得心が行かぬ様子だが、己はお前の身の為また子供等の為を思うから云うんだよ、能く考え
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