男は伊之吉《いのきち》女はお米《よね》と名を付ける事になりました。茲《こゝ》に一つ不思議なことには伊之吉お米で、双児というものは身体の好格《かっこう》から顔立までが似ているものだそうで、他人の空似とか申して能く似ているものを見ると、あゝ彼《あ》の人は双児のようだと申しますから、真物《ほんもの》の双児は似る筈ではございますが、男と女のお印が違っているばかり、一寸《ちょっと》見ると何方《どちら》が何方かさっぱり分りかねるくらい、瓜二つとは斯《こ》ういうのを云うだろうと思われ、其の上|両児《ふたり》とも左の眼尻にぽッつり黒痣《ほくろ》が寸分違わぬ所にあります。これが泣き黒痣という奴で、この黒痣があるものは何うも末が好《よ》くないと仰しゃる方もあり、親が子の行末を案じるは人情|左様《そう》ありそうな事で、お若はそんなこんなで大層|両児《ふたり》を可愛がりますから、伯父の晋齋はます/\心を痛め、或日《あるひ》お若が前に来て、
 晋「赤児《あか》は何うしたね」
 若「はい、今すや/\寝つきましたよ、伯父さん本当《ほんと》に妙ですことねえ、この児達は、泣き出すと両児一緒に泣きますし、また斯うやって寝
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