「ソレ若が気絶をした、早く/\」
此の物音に駭《おどろ》いて、門弟衆がドヤ/\と来《きた》り、
○「先生何事でござります、狼藉者でも乱入致しましたか」
晋「コレ/\静《しずか》にいたせ/\、兎も角早う若を次の間へ連れて行《ゆ》き、介抱いたして遣《つか》わせ」
是から灯火《あかり》を点けて見ると恟《びっく》りしました。其処《そこ》に倒れて居たのは幾百年と星霜を経ましたる古狸であった。お若が伊之助を恋しい恋しいと慕うて居た情《じょう》を悟り、古狸が伊之助の姿に化けお若を誑《たぶら》かしたものと見えまする。併《しか》し斯《か》ような事が世間へ知れてはならぬとあって、庭の小高い処へ狸の死骸を埋《うず》めて了《しま》ったという。さりながら娘お若が懐妊して居る様子であるから、
晋「アヽとんだ事になった、畜生の胤《たね》を宿すなんテ」
と心配をして居るうちに、十月《とつき》経っても産気附かず、十二ヶ月《つき》目に生れましたのが、珠《たま》のような男の児《こ》、続いて後《あと》から女の児が生れました。其の後《のち》悪因縁の※[#「※」は「「夕」+「寅」を上下に組み合わせる」、第4水準2−5
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