は伊之助に相違ないから、
 勝「アヽ何うも誠に済みませぬ、慥《たしか》に伊之の野郎に違《ちげ》えごぜえませぬ」
 主人「それ見ろ、然《しか》るに何《なん》で昨夜《ゆうべ》は来る筈がないと申した」
 勝「イエ、昨夜は何うしても来る訳がごぜえませんので」
 主人「今夜のは確《たしか》に伊之助に相違ないナ」
 勝「ヘイ、伊之の野郎で」
 主人「それが間違うと大事《おおごと》になるぞよ」
 勝「イエ、何様《どん》な事があっても、よ宜しゅうごぜえます」
 主人「ウム宜《よ》し」
 ソッと抜足《ぬきあし》をして自分の居間へ戻り、六連発銃を持来《もちきた》り、襖の間から斯《こ》う狙いを附けたから勝五郎は恟《びっく》りして、
 勝「まゝ先生乱暴な事をなすっちゃアいけませぬ、伊之の野郎は打殺《ぶちころ》しても構やアしませぬが、もしもお嬢さんにお怪我でもありましては済みませぬから」
 主人「イヽヤ気遣いない」
 伯父の高根《たかね》の晋齋《しんさい》は、片手に六連発銃を持ち襖の間から狙いを定め、カチリと弾金《ひきがね》を引く途端、ドーンと弾丸《たま》がはじき出る、キャー、ウーンと娘は気絶をした様子。
 晋
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