寝こかしに仕やアがって、行きやアがったんだろう、枕許へ来てお寝《やす》みなせえとか何《なん》とか云やアがって」
 伊「ウフヽヽ寝こかしにも何《なに》にも極りを云って居らっしゃる、昨夜《ゆうべ》は些《ちっ》とも寝やアしないじゃありませんか、あなたが皺枯声《しわがれごえ》で一中節を唸《うな》って、衣洗《きぬあらい》から、童子対面までやった時には、皆《みんな》が欠伸《あくび》をしましたよ、本当に可愛《かあい》そうに、酷《ひど》いじゃアありませぬか」
 勝「ウム成程、寝ねえナ」
 伊「それから夜が明けると朝湯に這入って腕車《くるま》で宅《たく》へ帰る間もなくお前さんが来たんですよ」
 勝「成程、何を云やアがるんだ、あん畜生《ちきしょう》、ま師匠、堪忍して呉んな、己《おら》ア一寸《ちょっと》行って来《く》らア」
 又慌てゝやって来た。
 勝「ヘイ先生行って来ました」
 主人「何うした」
 勝「何うにも斯うにも、何うあっても昨夜《ゆうべ》は来《こ》ねえてんです、彼奴《あいつ》も私《わっし》も昨夜は些《ちっ》とも寝ねえんですもの、ガラリ夜が明ける、家《うち》へ帰《けえ》るとお人だから、直《すぐ》に来
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