「ヘイ、何うもそれがあわてちまいましたもんだから、誠に何うも面目次第もない訳で」
主人「吉原《よしわら》へ行ったと云うのか」
勝「ヘイ」
主人「宵から行ったか」
勝「ヘイ」
主人「それじゃア、まだ貴様|欺《だま》されて居るのじゃ、吉原の引《ひけ》と云うのは十二時であろう」
勝「左様、一時から二時ぐらいが大引《おおびけ》なんで」
主人「其の時に貴様を寝こかして置いて、自分は用達《ようたし》に行《ゆ》くとか何《なん》とか云って、スーッと腕車《くるま》に乗って来て夜明まで十分若に逢って帰れるじゃアないか、貴様は伊之助に寝こかしにされたことを知らぬか」
勝「エ、寝こかし、成程、アン畜生《ちきしょう》」
主人「吉原と根岸では道程《みちのり》も僅《わずか》だろう」
勝「左様、何うもあの野郎、太《ふて》え畜生だ、今|直《じき》に腕をおっぺしょって来ます」
又出かけて来た。
勝「師匠、在宅《うち》か」
伊「先刻《さっき》の事は冗談でしたろう」
勝「ナニ冗談も糞もあるもんか、え、おい、お前《めえ》吉原から根岸まで道程は僅だぜ、何《なん》でえ、白《しら》ばっくれやアがって、人を
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