ねえことでさア、宜うごす、明日《あす》アポン/\と打壊《ぶっこわ》しやしょう」
晋「おい/\お前は何を言ってるんだよ、私《わし》は何処《どこ》も壊してくれなんかッてえ事|言《いい》やしない」
勝「いけねえや、先生、昨日仰ゃったあの狸の伊之をドーンとお遣《や》んなすったお座敷を毀《こわ》すんでげしょう、あんな事のあったお座敷は居心が良くねえから、ナニ外の仕事は何うでも押ッ付けてえて遣っ付けまさア」
晋「困るな早呑込みをしては、左様《そう》じゃないのだよ、あの座敷も建直すことは建直すがの、それより先に始末を付けなくてはならないものがあるんだ」
勝「ヘー、違《ちげ》えましたか、ヘー」
晋「そら大阪の方で子供を貰おうと仰ゃる方な」
勝「ウムヽヽヽヽ、違えねえあの一件か、良うがすとも大丈夫《でえじょうぶ》でげす、御心配《ごしんぺえ》なせえますな、ナニ訳アねえや直ぐ」
晋「まア待ってくんな、其様《そんな》に慌てなくても宜《よ》い」
おいそれ者の勝五郎が飛出そうとするを引止め、高根の晋齋は懇々《こん/\》と依頼しました。そこで鳶頭も先生様があゝ云って、己《おい》らのようなものにお頼みなさるんだから、早く両児《ふたり》を片付けて上げようと存じまする親切で、直ぐ越佐さんの方へ参りまして斡旋《とりもち》を致すと、先方《さき》でも子供が欲《ほし》いと思ってるところなんでございますから、相談は直ぐに纒《まとま》りまして、お米は越佐の養女に貰われ、夫婦も大層喜び、乳母をかゝえるなど大騒ぎでございます。さてこれで女の方は片付いたがまだ一人いるんで、勝五郎は逢う人ごとに子供はいらねえかと云ってますんで、口の悪い友達なんかは、
○「オイ勝ウ、手前《てめえ》な、そんなに子供々々と己達《おれだち》にいうより、好《い》いことがあらア」
勝「なんだ、誰か貰ってくれるんか……」
○「うんにゃア、逆上《のぼせ》ていやがるなア此奴《こいつ》は余っぽど、そんなに荷厄介するならよ、捨《うっち》ゃって仕舞やア一番世話なしだぜ、ハヽヽヽヽ」
勝「こん畜生《ちきしょう》、手前《てめえ》のような野郎が捨児《すてご》をするんだ、薄情の頭抜《ずぬ》けッてえば」
○「勝さん怒《おこ》ったって仕方がねえや、それじゃアお前《めえ》売って歩きねえな、江戸は広《ひれ》えとこだ、買人《かいて》があるかも知れねえ、
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