訳では聞棄《きゝずて》にならぬ、これから蟠龍軒の処へ往って掛合《かけお》うて来ると申しますから、手前は彼《あ》のような悪人にお構いなさるなと強《た》って止めましたが、日頃の御気象、お肯入《きゝい》れもなく其の儘おいでになりました、其の時は何ういうお掛合をなすったか知りませんが、遇ったら聞こうと思って居りますと、其の翌晩、蟠龍軒の屋敷に四人の人殺しがあったという評判、只今承われば文治様の仕業だと申す事ですが、全く蟠龍軒の屋敷の者を斬殺《ざんさつ》しましたのは、諸人《しょにん》の為でございます、何卒《なにとぞ》お命だけはお助け下さいますよう願い奉ります」
 と文治のあさましき姿を見ては水洟《みずっぱな》を啜《すゝ》って居ります。
 奉「それに相違ないな」
 源「御意にございます」
 奉「文治郎、源太郎、追って呼出すゆえ神妙に控え居《お》ろうぞ」
 同心「立ちませえ」
 是にて吟味落着致しまして、諸役人評定の上、文治儀は死罪一等を減じて、改めて遠島を申付けるという事に決定いたしました。総じて罪人に仕置を申し渡しますのは朝に限ったものですが、尤《もっと》も牢名主へは其の前夜、明日《あす》は誰々
前へ 次へ
全222ページ中47ページ目


小説の先頭へ
文字数選び直し
三遊亭 円朝 の一覧に戻る
作家の選択に戻る
◆作家・作品検索◆
トップページ 登録 ご利用方法 ログイン
携帯用掲示板レンタル
携帯キャッシング