一日々々と看病に其の日を送り、命数尽きて母は歿《みまか》りましたゆえ、今日《こんにち》母の葬式を済まし、一七日《ひとなのか》経ちたる上は卑怯未練なる彼《か》の蟠龍軒を捜し出して、只|一打《ひとうち》と思い詰めたる時こそあれ、どういう了簡で濡衣《ぬれぎぬ》を着たかは存じませぬが、江戸橋にて友之助の引廻し捨札を見れば、斯《こ》う/\云々《うんぬん》、よしや目指す敵は討ち得ずとも、我に代って死罪の言渡しを受けたる友之助を助けずば、武士の一分《いちぶん》相立ち申さず、お上へ対し恐多《おそれおお》い事とは存じながら、かく狼藉《ろうぜき》いたし候段、重々恐入り奉《たてまつ》ります、此の上は無実の罪に伏《ふく》したる友之助をお助け下され、文治に重罪を仰付《おおせつ》け下さいますよう願い奉ります」
奉「フウム、然《しか》らば其の方が……」
時に横合《よこあい》より亥太郎「恐れながら申上げます」
役人「控えろ」
亥「えゝ、こりゃア私《わっち》の……」
役「黙れ」
亥「控えろたって残らず私の仕業で」
役「控えろと申すに何を寝言を申す」
亥「だって皆《みん》な己が為《し》たんでえ、お奉行様、
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