ィ方か存じませぬが、お助け下さりまして有難う存じます」
 船頭「とても駄目だと思ったが、よく気が付いたなア」
 文「有難う存じます、今|一人《いちにん》の舟人は如何《いかゞ》致したか、御存じありませぬか」
 船「此処《こゝ》にいるじゃねえか、見なせえ、此の通りの打傷、いろ/\介抱もしたが、とても駄目だ、諦めなせえ」
 と聞いて文治は舟人の亡骸《なきがら》に縋《すが》り。
 文「これ島人、これ島人」
 もう冷え切って居りますから、いくら呼んでも甦《よみがえ》りは致しませぬ。
 文「さて/\不憫《ふびん》なことを致したわい」
 船「どうも仕方がねえだ、諦めなさるが宜《い》い」
 文治は夢を見たような心地、
 文「一体こゝは何処《どこ》でござりましょう」
 船「何処ッて大変な処だ、己《おら》ア新潟通いの船頭だが、昨日《きのう》の難風《なんぷう》で、さしもの大船《たいせん》も南の方《ほう》へ吹付けられ、漸《ようよ》う此処《こゝ》まで帰る途中、毀《こわ》れた小舟に二人の死骸、やれ不憫なことをした、定めし昨日の風で難船したのだろうと、幸いに風も静かになったから、手数を掛けてお前がたを助けてやったの
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