オて、
「左様々々、まア名主、そなたも我らと一緒にまいれ」
と無理に連立って此方《こなた》へまいりました後《あと》で、
蟠「これ女中、もう其許《そこもと》が何程|※[#「※」は「あしへん+宛」、388−6]《もが》いても逃すもんじゃアない」
町「あなた、何《ど》うぞ御免下さいまし」
蟠「分らん奴だな、えゝ面倒な、じたばたすると斯様《かよう》いたすぞ」
とお町を其の場に押倒し、其の上に乗し掛って、
蟠「さア何《ど》うだ、今更何うも斯《こ》うもねえ」
今はお町も一生懸命、用意の懐剣を取出そうと致しますると、
蟠「やア此奴《こいつ》め、刃物を持って居やがるな」
ぎゅッと其の手を押え付けました。
町「あいたゝ/\」
蟠「さアこれでもか、何《ど》うだ/\」
と無理|強談《ごうだん》、折柄《おりから》暮方《くれかた》の木蔭よりむっくり黒山の如き大熊が現われ出でゝ、蟠龍軒が振上げた手首をむんずと引ッ掴《つか》み、どうと傍《かたえ》に引倒しました。思いがけなき熊の助勢にお町は九死《きゅうし》の境《さかい》を遁《のが》れ、熊の脊に負われて山奥深く逃げ延びました。何時《いつ》まで
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