謔ず》の神々よ、どうぞ一命を助けたまいて、一度蟠龍軒に邂《めぐ》り逅《あ》いますよう、又二つには女房お町に逢いまして、共々に敵討の出来まするよう、助けたまえ護らせたまえ」
と思わず声を放ちて祈りますると、島人は不思議そうに文治の顔を見ては、何《ど》うかされるのかと怪《あやし》んで居りまする。文治はそれと心付きて、島人を励まし、自分も力を添えて舟を操《あやつ》りましたが、
文「いや待てよ、何処《どこ》の島へ往《ゆ》くのか知らぬが、磁石も無ければ的《まと》もない、何方《どっち》の方へ往く所存か知らん、困ったものだ」
と思いまして、
文「これ/\島人、何処まで往っても見当が知れぬではないか」
と真似をして見せますと、
島「風暑い」
と申します。さては南の方へ往《ゆ》くのかと少しは安心いたしましたが、兎角する内に東の方《ほう》が糸を引いたように明るくなりました。
文「はゝア、東は彼方《あっち》の方だな、途方もない見当違いをして居《い》るものだ、大分浪も静かになったようだが、こうして居《お》る内には何《いず》れかの島へ着くであろう」
と夜《よ》の明けるに従っていよ/\安心いた
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